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Yes!プリキュア5 16話『こまち小説家断念!?』

すっかりグレンラガンの裏番組になりつつある『プリキュア5』だが、今回の16話は素晴らしかった。
個人的には、シリーズ最高傑作級だと思う。

アニメーションは奥行きの感覚が素晴らしく、スピード感もあり、一秒くらいで流れてしまう短いカットが本当に豊かだった。
止めるところは芝居で稼ぎ、そのぶん動かすところは贅沢な、リミテッドアニメーションの理想的なパターンと言っていいと思う。
プリキュアでアクションが格好良かった話は、本当に久しぶりだ。

○16話の物語の、素晴らしかった部分について

脚本は、後述する大きな穴がひとつあるのだけれど、それ以外は文句なし。
キーキャラクタであるナッツの事情をしっかり前提にとって、こまちの夢と失望の話を書きながら、ナッツとこまちが仲良くなる話。
かつ、もうすっかり忘れかけていたドリームコレットと王国の話を、ナッツとココのキャラクタの描き直しと当時に復習させてくれる話。
非常に射程距離の長い一話だが、パズルのようにテクニカルなアクションの流れとセリフ配置で、きっちりやりきってしまった。
こんな複雑な話が、ごく自然にするりと見れてしまうということ自体が、非常にたしかな技術のあらわれなのだ。

なにより素晴らしいのは、クライマックスの展開の無駄のなさ。複雑な話を、よくもこれだけアクションシーンの中でやりきったものだ。
特に、ドリームコレットがはげしい戦闘の中で飛んでしまって、「やさしさを利用されてパルミエ王国をほろぼされた」経験をもつナッツにそれを守らせ、それをさらに「気持ちをこめて書いた物語と絶望を利用された」こまちが守るという展開が、絶妙。せりふが邪魔になるアクションシーンに無理に説明ぜりふを入れることなく、必要なことを語りきっている。
今回の敵へのとどめも、めずらしくこまちの親友であるかれん。

「こまちの大切な物語を、土足で踏み荒らしたことを反省なさい」

実は『プリキュア5』の人物配置の中で、お姉さん役であるこまちに対して、対等な高さからこのことばがかけられるのは、かれんだけなのだ。ほかのキャラクタからだと、言われるこまちがキャラ的に損をしてしまう。
けれどこの話の中で、こまちは自分の書いた物語と絶望が利用されたことだけは無条件に怒っていいし、その怒りを「いいんだよ」と認めてくれるのは友だちであればこそなのだ。
言ってほしい場面で、言ってほしい人が、言ってほしい内容のことばをかけてくれる。
物語にとって、こんな単純なことが、どれほどの力を持っていることか。

○16話の物語の、光があたると必然的に出る影

今回は、細かい表情の表現も丁寧で、ほんとうによく行き届いた話だった。
ただ、ひとつだけどうなのだろうと思った点がある。
今回語られた「こまちの心情」を本当の意味で追いかけるのは、プリキュア5の主要なお客さん層(小学校低学年以下の女の子)には無理だ。

小説に限らず、「なにかを作る」ということは、厳しい。
”作ったもの”が相手を動かせなかったとき、相手の感受性やセンスを責めることができないからだ。”もの”が駄目だったとき、責任はまず無条件に作り手自身に返ってくる。
今回でいうと、こまちは自分の小説の評価が悪かったことで、悪い評価を出したナッツを責めることはできない。
逆に、なぜそんなことを言うんだと仲間に詰め寄られたナッツの姿を見ると、それまで自分の書いた小説がほめてもらったことすら「友だちだから」なのかと疑ってつらくなる。
そのナッツが責められているときの、こまちのつらそうな表情の意味が、プリキュアのお客さんである小学校低学年以下くらいの児童にはピンとこないと思うのだ。

しかも、最後の最後まで、のぞみたちはものづくりの苦労に近づきもしないし、実はナッツも『海賊ハリケーン』というこまちの小説をほとんど評価していない。
ただ、ポジティブ女王ののぞみが「ナッツは素直じゃない」と勝手に解釈しただけなのだ。
その一線の誠実さを、おとなの視線からは苦さとともに評価できる。けれど、子どもから見るとすっきりしないオチなんだろうなとも思うのだ。

「友だち関係の中での自分の位置づけ」は、人間関係があらわれる相対値の関係だ。仲がよければ高くなるし、けんかでもすれば低くなる。
だが、”もの”を作るということは、まわりに友だちがひとりもいなくても位置づけが出る、”もの”と相手が一対一の状態で試される絶対値の関係だ。だからこそロマンもあるし、夢にもなるのだと思う。
ただ、日常生活の中でこの”ズレ”を味わうことは、非常にすくない。
一貫して今回の16話では、ものづくりにまつわるこの特殊な感覚を土台にしている。
そして、安易ななぐさめはないし、こまち自身が持たない限り楽観的な展望すら一切ない。

その厳しさは、たぶん主人公ののぞみやプリキュアたちよりも、敵であるデスパライア(おとなの象徴っぽい)のほうに近い。
そのズレの感覚のせいで、この話は、本当によくできているからこそ評価しにくいものになってしまっている気がする。

グレンラガンはたしかによくできているけれど、最近の『プリキュア5』は、もうちょっとかえりみられていいと個人的には思います。

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今までプリキュアは三墨なぎさ・雪城ほのか、の2人のプリキュアを初めとして、様々な女の子達が悪と戦ってきました。 [続きを読む]

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