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魔法少女リリカルなのはStrikerS 9話 『たいせつなこと』

あれだけ8話で好き勝手やっておいて、「なのはさんの訓練弾は優秀」のひとことで緊張感のレベルを一段さげたのは、うまい。
けれど、7話までだらっと物語を流してしまった現状を考えると、結局怒濤(どとう)の展開は起こらなかったということで、厳しい。
それでも、すくなくとも今回は、シーンにムダもなく、『Strikers』でもっとも脚本と演出がかみ合った話だった。

  • この9話の中で完結する見どころがきちんとあり
  • この9話でなにをしたいのかが明確で
  • 8話までの物語の意味づけを提示し、10話以降の流れへの筋道をつけた
  • ついでに、おおきな物語もすこし進んだ

物語の流れとして、今回の9話は、シーンが妥当に配置されている。
あくまで妥当であって素晴らしいではないのだけど、『リリカルなのは』は妥当なものの丁寧な積み重ねが武器なので、らしいかたちだと思う。

ただ、やっぱり「Strikersはどうしちゃったんだろう」という感覚は残っている。
どこにそう感じたかというと、元々は、なのはとティア(新人)がモメていた問題なのに、その解決をシグナムとシャーリーがやってしまったことだ。

そのあいだ、なのはさんはなにをしていたかというと、敵が海上に出て新人では戦えないという理由で、みずからそれを迎撃に行っていた。
このあたり、設定としては教官と訓練生の関係よりも本来業務のほうが大事なので、多少引っかかるが妥当だ。

ティアナはというと、本人がいない間に、取り巻きによって「なのは」「なのはAs」の回想まで使って袋だたきだ。
そして、機動六課に居場所がなくなるんじゃないかというほどぼろぼろになったところで、なのは本人がようやく登場する。これも、高町なのはというキャラクタを徹底的に大事にして傷はつけないのだという意思表示だと思えば、妥当だ。

ティアナ袋だたきから締めに至る流れを、まとめるとこうなる。

  1. シグナムが「軍人」としての立場から、厳しいことを言ってティアナを突き放す
    お客さんの何割か(特にティアナに感情移入してくれている人たち)は、道理としてはわかるけれど感情として納得できない。
     
  2. シャーリーが前2シリーズの回想をひきあいに出して、お客さんの感情として今回の展開を納得してもらう。
    ほぼ全員が昔は敵だったことで新人全員を驚かせ、無茶をするとダメなんだとなのはの失敗を出すことで、ティアナを追いつめる
     
  3. なのはが、これまでの訓練展開についての真意をようやく話す。
    「わたしの教導、地味だから」と、なのはもあやまる。
    しかも、ティアナのいいところを教えたうえ、彼女の考え方は間違っているとは言えないと、クロスミラージュの近接格闘モードを解除してティアナを肯定する
     
  4. 物語の流れとしてこれが正しいことを提示するため、ティアナが『ストライカー』というタイトルにつながる目標点を、なのはからの受け売りとして新人たちに伝える。

やはり、理にかなって妥当な配置だ。
「突き放し」「追いつめ」「肯定し」「フォローする」かたちにケチをつけているわけでもない。論理的な構成というのは、どんな厳しい感情をなぞる流れでもこうした段階を踏むものだ。感想サイトをすこし回らせていただいたが、9話は実際きちんと効果をあげていると思う。

今回の9話で、リリカルなのはStrikersの構造自体、あらたな局面をむかえたと言っていい。
8話までの「結局スバルとなのはのどっちがメインなんだ?」という問題には整理がついた。
「メインはなのは」ということで、一本化したとみていいと思うからだ。
スバルにメインをあずけるなら、このどん底の状況からはいあがるため、「先輩の話をただ聞くだけ」ではなく、ちいさなものでもふたりの力で何かをつかませるべきだった。

けれど、一番あぶない方向に流れたような気はする。
新人4人までなのは肯定派になったことで、人数配置が極端な偏りができてしまったせいだ。
この偏りがなぜあぶないかというと、キャラ人数とそれに付随する出番数の暴力で、なのはさんがどんな無茶を言ってももう物語的にそれが通ってしまうから。

上に、「なのはとティア(新人)がモメていた問題なのに、その解決をシグナムとシャーリーがやってしまった」と書いた。
なぜそれで納得感が出て機能したかというと、これも彼女たちが「なのはの理解者で彼女の本当に意に添わないことは一切しない」人物だからだ。
8話まででろくにしゃべらせなかった、色のついていないキャラクターにそれをやらせたのは、キャラクタの動かし方としては非常にうまい。
けれどそれ以上に、「色がないものは”なのは色”という雰囲気が、物語の中で一定の機能を持つ(解決はシグナムとシャーリーでもよかった)」こと自体、非常にかたよっている。

9話のまとまりは、”機動六課自体がなのはファミリーで、なのはの意思が肯定されている世界に見える”ことに起因している。
たしかに、今のかたちに物語を整理しておけば、13話以降で物語が急転しても、スバルやティアにも、なのはを代弁してもらう」ことだってできる。
けれど、実質的に物語はどんどん内向きに縮んで、抜本的な改善にはなっていない。
このままでは、役割が似てしまった新人4人が、キャラクタの個性まで圧縮されてキャラを生かせない展開になるようで、あやうく思える。
でなければ、機動六課内部の話が多いまま続くように思えるのだ。

整理すると、変化の方向を定めた9話に引っかかっているのは、こういうことなのだ。
前シリーズまでとまったく同じ流れで進められるとは思えない、「教官」と「新人」という複雑なかたちで、『Strikers』の人間関係は配置されている。
なのに、結局、前シリーズまでと同じ構図で物語を進めるような流れを、この9話でつくってしまったように見える。
これは、せっかくのチャンスに、7話まで物語進行をのろくして物語をちいさくしていた問題を、解決できなかった(放棄した)ということではないか?

現状、ダイナミックな人間関係の変化は、機動六課をまっぷたつに割るか壊滅させるかくらいの急展開を起こせないと無理だろうなとは思う。そんなベタな予想を、いい意味で裏切ってくれる素晴らしいサプライズがあることを、実際、本当に期待している。

最初に書きましたが、ひとつの話としてはたぶん『Strikers』で一番しっかりした話になっていたと思います。
ここから13話までで、どんな”機動六課”の姿をお客さんに見せられるかが勝負っぽいですね。

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コメント

なのはの死亡フラグが着々と進んでいる。たぶん新人達を庇って
新人達の巣立ちの予感も、というより全員飛ぶ?のか。

今回がいままでで一番面白かったのだが、やっぱり足りない。
怪我にしても、後遺症もないようだし完治しているのなら体ではなく無茶を心配するべきだろうに。リミッターだって力の使いすぎ無茶のしすぎを心配して、仲間や自分に課しているとかだったら納得できたが、むしろそれ自体訓練の一環だったりするか。
負傷事件にしても詳細不明で当事者や居合わせたヴィータは語らず事実だけを言い無茶をするなと説得した。
当事者同士の対話が和解した後だったのが惜しかったが、それも後ろで新人達が聞いていたし、なにより接近戦も教えるつもりだったというのが良かった。 
これで信頼関係が出来上がってきた。これでようやく物語が進んだ。
最後に巣立ちを予感させたが、未来の展望を示しているのは今回かなり掘り下げられたティアナだけでほかの新人はわからない。  まあそれでも今回はいままでのいきなりの展開じゃなくまとめていたし良かったと思う。 このまま行って欲しいものだ。

しかし展開は燃えないな。無印を知らずにASの1話の「仲間か」「友達だ」の何も知らなくても燃える展開や2話のすごいガチバトルやカウント射撃は燃えたなあ。作画も良かったし、もちろん作画より脚本演出だが。

投稿: ジーノ | 2007/05/31 02:15

>ジーノさん
なのはさんのケガ話は、着地点というより、現状なのはさんに本気で戦わせない理由づけかもしれないですね。
やっぱり、なのはたちと新人たちの、「本気でぶつかっても限定状態のなのは相手に、デバイスすら使ってもらえず、さらに思いっきり手加減されても一蹴」という戦力比が、ちょっとマズイ。

後半に大きい敵を持ってきて一気にインフレさせるのでしょうが、ちょっと”ため”を作りすぎではないかと思います。

今までの『なのは』のつくりをみていると死亡はないと思うのです。が、ラスト前あたりで、なのは大けが&新人ガンバレ展開は、アリというか本当にきそうな気もします。

展開は、たしかにイマイチ燃えませんね。
やっぱり、なのはと新人たちの戦力比を開けすぎている。主人公自身がバランスをぶっこわしていて、これに対抗するぐらい敵を強くすると新人が目立たなくなる二十苦状態が厳しいですね。

バトル展開って、「負けたら何かを失う」的な、かかるものがないとイマイチ燃えないんだなと、Strikersを見ているとつくづく思います。

投稿: ニート風味 | 2007/05/31 02:35

なのはSSは物語的にかなりゆっくりやっていてスピードがない。
今かなり面白いグレンラガンと比較すれば、村脱出、敵からガンメン奪う、合体して旅へ、キタン達に会う、ロシウの仲間入り、温泉に集結、大グレン団結成、カミナ死す、ニア登場
1話ごとに着実に物語は進んでいる。
総集編以外完璧な構成だったコードギアスも、能力に目覚める、クロヴィス殺害、能力限界を知る、スザク奪取、ユフィ登場、スザク転校、コーネリア襲撃失敗、騎士団結成、カレンエースに、ナリタ攻防戦、キョウト接触、残党掃討戦、マオ登場にシャーリー記憶を失う、CCマオと決着、スザク過去暴露、スザク騎士に、シュナイゼル登場、四人島流しついでにガウェイン奪う、ルルーシュスザク共闘、学園祭宣言、ユフィ虐殺、ユフィ死す、決戦へ。
1話1話完成度が高く飽きさせなかった。スザクの奇麗事だけの行動の真意が分かった後、前後を見返しても彼の行動原理はブレなかった。これは最初から全部作ってからじゃなきゃできん。
20人以上のキャラを見事に動かしきった。

この二つはほとんど1話完結に大きな物語に続いている、ガンメンを倒す、ブリタニアを倒す、目標を多少外れようとも事態は進んでいく。バカやったり仲間作ったり結束を高めたりとか。
しかしなのはでは訓練しているのは敵に敗れたからではなくそれぞれ強くなりたいと思っているから。 すぐに感情移入できなかった。  コーネリアに敗れたから黒の騎士団を作ったルルーシュ。獣人に対抗するためにガンメン奪って大グレンを根城にする大グレン団。 なぜそうしたいかわかるというのは大事なことだと思う。
長文失礼します

投稿: ジーノ | 2007/05/31 18:33

キャラクタの強いタイプの物語は、物語自体が走るのではなく、キャラクタの”動機”が物語を引っ張るというのは、実際そのとおりです。
「1話完結で大きな物語に続く」という形式は、きちんとやるのが本当に難しいものなので、物語テンポによっては達成できなくてしかたないかなとは思います。
実際、短い物語できちんと締めをつくるのは、戦闘シーン(と、はっきり勝ち負けがつくこと)がないと、一気に難度があがるのです。

物語の配置構造というのは、たぶんどこまでいっても1話段階では不完全なのだと、個人的には思います。
たとえば「コードギアス」はすばらしい作品でしたが、それでもマオが出てくるあたりまでは弾けきれないものがありました。
このあたりは、1話~5話くらいの世評と、15話以降くらいの世評を比べてみると実際そうだと思います。
ルルーシュが実質無敵キャラで、なおかつその存在を知られてすらいないという、明確な弱点が、確実に足を引っ張っていました。

目を見なきゃならないなどギアスに制約はあったのですが、それは物語上いくらでも理由をつけて克服できるものにすぎません。
これが、マオの登場で、「敵がギアス能力を知っていて」かつ「ルルーシュ以上の能力者もいるかもしれない」と埋められ、一気に緊迫感を強めました。

たいていの物語は、どこかしか「配置段階ではよくても動かしてみるとマズイかんじ」の欠点を持っていて、これと作中でどうつきあうかで最終的な印象は左右されるように思います。

さきのコードギアスのように、後半になって一気に面白くなった作品はけっこう多いのです。だからこそ、Strikersの足踏みが長すぎることに引っかかり続けているわけでもあります。
8話の展開や9話の丁寧さなど、動き始めると一気に傑作に化けるかもしれないと思える要素も多いので、よけいに引っかかってのでしょう。
個人的にはStrikersの今後に期待しています。

投稿: ニート風味 | 2007/05/31 20:10

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