魔法少女リリカルなのはStrikers 8話『願い、ふたりで』
なのはさんはいったいどうしちゃったんだろう。
5月に、プリキュア5、グレンラガンといったシナリオ手腕が確かな話をたて続けに見てしまったイメージと比べてしまっているのだろうけれど、ちょっとよろしくない。
このblogを開設して以来の、ネガティブな記事を書く。現状の『Strikers』が好きなかたには、本当にもうしわけない。
○前提作りが弱くないだろうか?
9話の予告を見る限り、どうも来週には、なのはさんの失敗なり敗北が描かれることになるらしい。
でも、それは一般的に言うなら「後出しじゃんけん」だ。
最初からそれは設定上の基本にしていたし、コミックでも触れていたじゃないかと、制作者側は考えているかもしれない。けれど、この『Strikers』単体で前提を作っていなければ、やっぱり初見のお客さんには「後出しじゃんけん」だ。
基本的に、上司部下の関係っていうのは、無条件に上司が強いものなのだ。特に、軍隊のような戦闘力を持つ集団では規律が強く、上司の決断で部下は最前線にだって送られる。
上司は部下をたたきつぶせてあたりまえなのだ。
軍隊モノなんかでこれをやるときは、こんな感じだ。
- 鬼軍曹の古傷や傷の後遺症やなくした親友の写真などを、ビジュアル的にはっきりわかるかたちでお客さんに見せておく。
- その後で、「一生懸命でなんとかなると思っていたら死ぬぞ」と、新兵をたたきつぶす。
- そして、落ち込む新兵たちに、謎として提示されていた(1)の理由が語られる。それによって、同じ失敗を新兵たちはくりかえさずにすみ、経験を伝えられる組織はすばらしいものとして描かれ、新兵は軍曹に近づくような成長ができる。
そのくらいやっておいて、はじめて機能するシチュエーションではないだろうか?
なのはさんみたいに、美少女アニメの主人公として傷一つなく、しかも第一話から「エース・オブ・エーブ」と持ち上げられていたキャラクタがやるのは、リスクが高い。
9話にやるのだろうなのはさんのショッキングな話は、たぶん今回の8話以前にわかりやすい前提を提示しておくべきだった。
もうひとつ、前提のよじれに見えるものは、組織の描かれかたのいい加減さだ。
軍隊モノでは、前線士官役と軍曹役は、きちんとわけられていなくてはならない。
これは単純な慣例ではなくて、部隊となる組織自体がそういう性質のものだからだ。
軍曹は基本的に「乗り越えられる者」であり「先輩」だ。士官には、「戦場のもっと大きな大局の一部分である」性格が出てくる。つまり、部下に対して「死ね」というのが指揮官だ。ふだんは偉そうにしていても「あいつらだけじゃ頼りない」と一緒に死地にとびこむのが軍曹である。
指揮官が最前線に飛び込むのは、まさに道理を越えた大勝負、それ自体がひとつの見せ場なのだ。(ただし空軍はのぞく)
そういうストーリー類型があるよというだけでない。組織には、士官と兵隊の区別があるので、空気を出したいならそれは踏まないとリアリティが弱まるのだ。
きれいな役も、汚れ役も、なにもかもなのはに押しつけるのは、”組織”を描く書き方ではない。
『Strikers』では、第一話から機動六課という組織ばかりを描いてきた。組織なんてはじめから描いていないというつもりなら、それはそれでバランスがおかしい。
そもそも、『リリカルなのはStrikers』が組織を中心に描かれていることに、設定的な理由ばかりみえている状態で、あまり気持ちよくないのだ。つまり、それでお客さんが気持ちよくなるための、「組織でなければ描けない物語がある」ような物語的要求が、いまだ提示されていない状態なのである。
○もはや、話の基盤に「魔法少女」らしい最後のロマンすらないのではないか?
物語において、なにが前提だったかは、最終的な物語が出そろわないとわからないところがある。けれど、リアルタイムで見ていて「これまずいなあ」と明確に思う部分はある。
たぶん、序盤でティアのお兄さんの話を持ってきたのがよろしくないのだ。
これでは流れ上、最悪、ティアのお兄さんも、ティアと同じような失敗をして殉職したように見えないだろうか。
今回の終盤の展開で、なのはが「やさしく」見えないのは、たぶんこのせいだ。
これでは、ボコボコに負けた上に、キャラクタ的に持ち上げられるのはなのはさんであって、ティアは得をしない。
なのはが怒った理由は、実社会にてらすと、納得できるものを山ほど考えつく。
- 部下へと、なのはは休みを削って自分が体得してきたノウハウを伝えようとしている。それが無駄になっている。
- しかも、職場は戦場だ。失敗したときは、自分やたいせつな仲間の死といった、取り返しのつかない結果を呼ぶ可能性も高い。そういう仕事で無茶(スタンドプレー)をされては、上司としてフォローすらできない。
- 今している試験も、訓練効果を見る機会にならない、無意味なものになっている。
- 「こんなことはしない」という、前半でのティアとなのはの約束が、”約束”として機能していなかったことになる。
けれど、この実社会的な常識をとおすと、物語はロマンがなくなる。
スバルたちは十年死にものぐるいではたらいて、「仕事のできた先輩たちに追いつけてない」とようやく感じる程度の成長しか見込めないという枠が、丸見えではないだろうか?
現実はそんなものなのだが、そんな話を、果たしてアニメで見たいだろうか?
『Strikers』は、どんなお客さんに向けているのかがふらふらした、独自路線を走っているように見える。けれど、独自路線のものへの感想がネガティブなものになるのは、はっきりとまずいところがひとつあるせいだ。
なのはの過去を描いたって、お客さんの中で沈んだティアのイメージを回復することにはならない。
これだけの大負けをしたのなら、ティアというキャラクタを立てるには、「ティア自身の努力なり成長でそれを乗り越えさせる」必要がある。
けれど、『Strikers』は26話しかない話のうち、キャラクタの掘り下げもほとんどなく、すでに8話を使ってしまっている。
ほかにもキャロとエリオのことだって描かなければならない。
そもそも、せっかく動き出した本筋らしい話を、この流れでまた凍らせてしまっているのだ。いったいいつ本筋を動かすつもりなのだろう?
ネガティブな意見だけを置くのも気持ちが悪いので、現状の『なのはStrikers』に思っていることを、今晩(深夜)くらいから別エントリたてます。
……いくら「淡々とたれ流す」blogとはいえ、再読読者さんのきわめてすくない設置直後で、続き物の長文エントリもどうかと思いますが。
個人的には、7話までの遅々として話が進まなかった状態よりは、まだよくなったかもとは思います。
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