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天元突破グレンラガン 11話『シモン、手をどけて』

個々のシーンで大勝利して、すばらしく爽快で、でも微妙に引っかかる印象の話だった。
つまり、個々の情報の処理はよかったけれど、全体のデザインとしてこんなに情報詰め込むのはどうなのよ?というクエスチョンマークが飛んだ11話だった。

それでも、技術的に言うとやっぱり高水準。
3本の大きい物語の流れ(ライン)を、破綻させずに使い切っていた。

  1. カミナの遺言を、はじめてシモンが理解して「シモンというひとりの男」として立ち上がった。(今回の物語の主線)
  2. 大グレン団のみんなが、シモンをリーダーとして認めた。
  3. ニアのキャラクタを確立させた。

わざわざこんな難しい話に新しい敵(不動のグアーム)を初登場させた理由は、たぶんふたつある。アディーネが性格的にからめ手に向いていないこと(今回の敵はいやらしくて下品であるほどよかった)、そしてお客さんが「シモンとアディーネの因縁の戦い」のように見ないよう誤解を避けるためだ。
つまり、使い捨てのように見せることによって、物語のフォーカスが当たっていない敵の印象を小さくして、お客さんにシモンとニアへ視点を集中してもらうという効果が出ている。

ラストの捨てられた姫たちの解決は、印象深いシーンだった。つまり、ただきれいだというのではない、理に合わない作り手の業みたいなものが出た、腹に残るシーンだ。
ここでやらなくても、これだけで話を一本つくるなり、大きい話の導入にするなりできたエピソードの、ぜいたくな投入だからだ。
それでも「ニアを『螺旋王の姫』という特別なものではない、ただのニアとしてキャラ的にひとりだちさせた」という印象づけとして、非常によかったと思う。

主線のクライマックスであるシモンの名乗りは、11話まで物語中一度もシモンに”これ”をさせなかったことで、「立ち上がったシモンの頼もしさ」を、うまく印象づけている。
8話でカミナが死んでから、回想シーンの中で、まともにカミナが登場したのも今回がはじめてだ。
つまり、出し惜しみして決定的なところで「観客がみんな会いたかったカミナ」の登場で流れを作り、そのまま必殺技の”狙って撃った”初披露までどとうの展開で燃焼しきってしまった。
本当に、カミナの回想から必殺技までの流れは素晴らしく爽快だった。

ラガンに空をとばせたのは、一話での天井をぶち抜いて空を飛んだあのカット以来だ。やはり「新しい局面に入った」シモンの物語を印象づけるためのイメージである。
このとき、ニアにシモンのぼろぼろになった”手”を見せたのは、生身の身体を意識させるカットだ。人間関係のスタートの切り方としては、ニアとシモンに、ちゃんとした恋愛をさせることを射程に入れている様子だ。
このあたりの展開は、本当に構成的にうまい。

これだけしっかり丁寧に作り込んでいて、それでも全体デザインに引っかかるのは、「シモンのひとり立ち」のラインと、「ニアの確立」のラインが、動機が似ているようで重なってないせいだ。
この流れなら、10話段階で、「ニアが人形である」という話をシモンに聞かせる展開を、一週間ちゃんと頭に残るように印象づけていてもよかった。2本のラインを前もって重ねておかなかったのは、けっこう痛恨のミスなんじゃないかと思う。

「人形」よばわりされるニア。「俺が信じる俺を信じる」最後まであきらめないシモン。
”ひとりの人間として立つ”ということでは似ているのだけれど、こうして並べて冷静に見ると、ふたつの問題は別モノだ。

そのふたつの問題を、それぞれ忠実に強調するシーンが作られているから、情報の詰めこみ感が出る。
本来もっと燃えられる場所で、二種類の燃料が交互にくべられることが、必要以上に物語をめまぐるしくしてしまう。
ジャンルのマニアやコア層を意識した作品の常ではあるのだけれど、”作りたい見せ場”をつめこんでしまうことも状況を加速している。そのせいで、せっかくしっかりした細部を、見る余裕がなくなってしまっている。
整理をしないと、情報量が多いタイプの物語は、バラけてゆく一方になってしまうのだ。

ニアとシモンのラインの混乱には、もうひとつ引っかかりの根がある。
そもそもシモンは、話の流れ上、自分の問題を解決したのであってニアのことを心配して助けにきたわけではない。
物語的要請で、「女の子が助けを求めている、だから彼はやって来た」という理屈以前のところをかなえた。だから、爽快だった。だが、理にはかなっていない。
(そもそも、勢いで流れてはいるが、ニアが大グレンの艦橋にいることだってシモンは知っているはずがないのだ。)
『グレンラガン』は理屈で見るアニメではない。そうかもしれない。だが、螺旋王の”人形”の話のように対象年齢層が高い話も同時にやっているから、やっぱり多少は引っかかるのだ。

本当に、物語を作るのはむずかしいなと思う。
これだけのデメリットを背負っても、二本のラインを並行する複雑な構造には、大きい意味があったからだ。
「シモンのひとり立ち」「ニアのキャラクタの確立」を同じ話でやったこと自体は、本当にうまい。
9話から登場したばかりのニアが、たった3話で、すでにメインヒロインの位置をかっさらっているからだ。
”ヨーコの株を落として相対的にニアをあげる”ことなしにこの納得感をつくるのは、やっぱりしっかりしたレベルの高い仕事なのだ。
これから”シモンの物語”としてグレンラガンが進む限り、男・シモンのひとり立ちを後押ししたニアの位置づけも、どうやら不動なようだ。
ニアの立たせ方との妥協点でベターなものを選んだのだろうけれど、本当は「ニアの物語」と「シモンの物語」の動機がきちんと重ねられたらベストだったというのは、事実だと思う。

ひとつひとつのシーンやディティールに支えてもらってはいるけれど、シナリオの骨格は、バランスが悪かったと思う。
本当に、この詰め込み方は、へたな監督がやったら不完全燃焼で終わるか空中分解かだったのではないだろうか。

総合メディアとしてのアニメーションの、強さとこわさを同時に見た気分の一話だった。

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コメント

それで?(鼻をほじりながら)
君はしたり顔で何やってるの?

投稿: ふーん | 2007/06/11 00:48

>ふーんさん
コメントをいただくのは久しぶりです。
私は淡々と感想テキストを公開しているだけです。
読んでいただきありがとうございました。

日数あたりのカウントもほとんどないblogですが、書くこと自体をモティベーションに細々と続けています。

投稿: ニート風味 | 2007/06/11 01:09

今期でも最高レベルの一つであるグレンラガン。
詰め込み過ぎと思われるでしょうが毎話の完成度や面白さはすばらしい。
何より展開が速い。わずか3話でカミナがいなくてもシモンがやっていけるように見てる私は納得させられた。
突然こうなったのではなく、回想関係なく皆が諦めるなか一人穴を掘り続けカミナの最後の言葉を反芻しニアを助けるために飛び出していく。これだけで納得させられた。すごいよ。
ニアも登場してすぐカミナのことを聞き、助けてくれたシモンを案じて励まし信じていると言った。
特に今回は二アの、助けに来たシモンにおいでって言われた時の表情が最高だった。来てくれて嬉しいという感情を泣きそうな笑顔で見せてくれた。

投稿: ジーノ | 2007/06/11 19:28

>ジーノさん
グレンラガンは、近年まれにみる爽快なロボットものアニメで、11話は中でも屈指の好エピソードでした。
グレンラガンは、一昔前のOVAに近いテンポで「30分で話をつくりきっている」と思います。
週間ベースのテレビ放送でこれをやるのは、本当に生半可なことではありません。

それに対してちいさなミスやほつれを覚え書きしていることに関しては、私自身が何のために書いているかというモティベーションの問題です。
私は、素晴らしかったものを「素晴らしかった」と言うためではなく、「なぜこれは素晴らしかったのだろう?」と考えたくて感想テキストを書いているからです。

話題がそれました。すみません。
私がグレンラガン11話で一番驚いたのは、ラインの混乱をとかずに観客の見せたいことろを描くほうを選んで、本当に見せきったことでした。
それは自分たちにそれができるというスタッフの自信がよくこもった、たぶんこの11話にとって最良に近い選択でした。
11話Bパート(CM後)の流れは、よく考えて練らなければ出てこないモノだと思います。
勢いで書いたわけでは、たぶんないのです。足を一度止めてなお理に合わない穴を放置してしまう選択をすることに、どれほどの確信と勇気と自信、そして裏打ちする実力が必要だったろうと、すなおに思います。

おもしろい作品とは、「どこがダメ」という減点法で生まれるわけではなく、面白いものを遠慮なく詰め込むことで成立するものです。
そして、レベルの高い作品は、方法を単純に一般化できない、作品独自のリズムとルールを持っています。
各論としての演出、どこでもりあがったということを追いかけるだけでは、そうそう見えてこないんだろうなというくらいに、『グレンラガン』はレベルが高いです。
どういうルール、どういう雰囲気がそれを作っているのか、一端なりとつかめたらいいなと思っています。

なんにせよ、話題がいろいろあるということは、この作品を好きだということです。本当に、よい作品だと思いますよ。

投稿: ニート風味 | 2007/06/11 23:17

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