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アイドルマスタ-ゼノグラシア 12話「ムスペルヘイム」

いつも安定してレベルが高いのだけれど、12話の節目直前回だけに、今回はとんでもなく緊密なドラマで構成されていた。
本当に、今期はいい物語が多いのだけれど、その中でもベストエピソード級のすばらしさ。

『アイドルマスター』の話をするとき、たぶん今のシーズンだと比べて面白いのは『グレンラガン』だと思う。

『アイドルマスター』と『グレンラガン』は、両方、ドラマ中心のメカものアニメーションだ。しかも、おもちゃの販促ではなく、人物のドラマをきわだたせるガジェット(道具)としてメカがある。
けれど、『アイドルマスター』と『グレンラガン』には、おおきな相違点がふたつある。

  • 『アイドルマスター』におけるアイドルたち(特にインベル)が、それ自体”ひとりのキャラクタ”として重要キャラクタの位置にあること。
    現状、『グレンラガン』において、ラガンはそういう立ち位置ではない。あちらは完全に人間のドラマがメインで、本当にラガンは道具扱いだ。
  • 『アイドルマスター』の物語は、たいてい一話で話が終わらない。その話の中で語られたドラマは、たいてい次の話、その次の話と長く引っ張られる。
    『グレンラガン』の物語は、一話で完結する。これは、『アイドルマスター』が深夜放送で年齢層が高いお客さん向け、『グレンラガン』が日曜朝で低年齢のお客さん取り込みも狙っていることもある。

『アイドルマスター』の物語作りは、非常に特徴的だ。
男性向きの物語よりも、少女漫画のほうに近い方法論で動いているためだ。

『アイドルマスター』では、前の話の引きを、思い切りテンションの高い状態で終えて後ろにつなぐ。超高空からヌービアムがインベルを地上へ放り投げた6話の引き、前回(11話)の千早が春香へ銃を向けようとした引きがそうだ。
こういう引きかたは、あまり男性客向きとはされない。男性客が、けっこう間の話を飛ばしてしまうため次の話を見るとは限らないのと、ケリがつかないと尻がむずむずする人が多いからだ。
男性客向きの引きかたの例は、バトルものを思い出してもらえるといい。銃を向けようとしたりぶん投げたりしたところではなく、最後の一撃で敵が吹っ飛んだり倒れたりした「死闘、決着!!」みたいな終わりかたをすることのほうが多いはずだ。

『アイドルマスター』では、前話の引きがすごい状態で終わることから、そこからつなぐとAパート(前半部)からひどく高いテンションで話がはじまるのだ。
あまりたくさんチェックしているわけではないけれど、こんなテンション構成を持っているのは、すくなくとも今期では『アイドルマスター』だけだ。

このつくりにはたぶん裏表として、短所もある。
「今回の物語で、なにを楽しめばいいか」をお客さんが迷わなくてすむように、物語の主題を一本化する必要が出てしまう。
これは、『アイドルマスター』の物語が、たぶん恋愛モノに近い構造を持っているということなのだと思うのだ。
つまり、恋愛モノは、まわりにどんな話があっても「どのキャラクタがどのキャラクタとひっついた」だけを見ていると楽しめる。同じように、「どのマスターがどのアイドルとひっつくか」だけを覚えていれば、アイドルマスターは楽しめる。だから、物語の開始を、前話の引きの位置からスタートしても、お客さんは「このキャラがらみの修羅場から開始か」と、わかりやすい。
逆に、だからこそ『アイドルマスター』の物語は、「マスターとアイドルの関係」というひとつの大きな束に含まれないものを扱うのが至難だ。

あんまりにも素晴らしかったので、今回は、キャプチャボードの機能を使って、だいたいのタイムカウントをとってみた。
CMをカウントしているし、秒数単位では相当いい加減なカウントだ。けれど、12話がどういう構成になっているか、順序と感覚は、面白い感じに出ていると思う。

  1. 1:30 不安の提示の開始。モンデンキントEUの人が、連絡ロスト中のインベルについて、「やられましたかね」と不安をあおる。
  2. 2:15 前話の引き。千早(前カノ)が春香(今カノ)に銃を向けた状況の再確認。

    <OPテーマ&CM>
  3. 6:00 千早(前カノ)の回想。後の修羅場展開を強調するための前フリ。
  4. 6:30 千早(前カノ)の前で、インベル(彼)の体の反応を無邪気に語りだす春香(今カノ)
  5. 6:45 春香(今カノ)が、インベルとのことをしらばっくれた千早(前カノ)の前で、インベルとの関係をのろけだす。修羅場シーン。
  6. 7:25 今回のクライマックスシーンに至るための状況説明
  7. 8:05 人造アイドルのマスター。クライマックスに至るための配置。
  8. 8:35 人造アイドルのマスター。「ネーブラがよわっちい」発言。真敗北フラグ。
  9. 9:30 亜美、ハーモナイズが落ちている発言。真敗北フラグ。
  10. 10:00 真出撃。真敗北フラグ。
  11. 11:45 人工アイドル出撃。真、火口に突入。BGMも緊迫感あるものに変更。真敗北フラグ。
  12. 12:30 真回想。真敗北フラグ。
  13. 13:05 春香(今カノ)、この間ずっとのろけっぱなし。千早(前カノ)、ついにぶち切れて今カノに銃を向ける。(お客さんが見逃しようのないショックシーン。OP直前のシーン[前話からの引き]をこのタイミングで回収! まさにベストタイミング)

    <Aパート終了/CM/Bパート開始>
  14. 15:30 CM開け。真、人工アイドルにおそわれる。真敗北。
  15. 17:20 場面を修羅場に。前カノの反撃。
  16. 17:35 真敗北。
  17. 17:55 不協和音。ヒエムス暴走。
  18. 18:15 千早転落。千早(前カノ)、インベルに見向きもされず。修羅場終了。
  19. 19:00 ネーブラ機能停止。人工アイドルに見向きもされず。(真完全敗北。クライマックス前に物語から真を実質退場させて物語をしぼる)
  20. 19:30 シミュレーション結果。グリーンランド沈没。クライマックスへ向けた前振り。
  21. 19:55 春香からの通信。春香、ここからようやく本筋に合流。(本筋ライン)
  22. 21:20 亜美から、春香とインベルのハーモニーが、みんなを救ってくれるという提示。
  23. 22:20 千早(前カノ)、ヌービアムで突撃。
  24. 22:30 人工アイドル、ヒエムス回収。アイスランド崩壊開始。(物語的クライマックス開始)
  25. 23:00 千早(前カノ)、空気を読まずにインベルと春香の一撃の前に立ちふさがる。春香(今カノ)に吹っ飛ばされる。(12話全体のクライマックス。修羅場ラインの”ドラマ”と本筋ラインの流れが、はじめて合わさったのはここ)
  26. 23:45 攻撃成功。ネーブラ回収。(13話の物語的な集結点。)
  27. 24:15 千早(前カノ)敗北。物語的にはヒエムス回収でトゥリアビータ側勝利。(ここも、修羅場ラインと本筋がつながって、次の話以降の伏線になっている。)
  28. 24:45 戦い終わって。次の話への引きとしての、真の状態。春香は、まったくそれとは関係なくインベルとラブラブ。(同上、ただしこのシーンは、真敗北のラインも加わっている)

時刻をで書いたのは、今回のメインドラマである、前カノと今カノの、インベルをはさんだ修羅場展開。
オレンジ色で書いたのは、真敗北展開。
で書いたのは、それ以外の、グリーンランド沈没、ヒエムス回収事件としての今回の話の展開。
三色に色分けしたように、三本あるドラマのラインごとに交互に山がつくられている。けれど、テンションを明確に下げるシーンが実質ない。
(CMをはさんでわずか7分間の、真敗北フラグの固め打ちっぷりは、まさに見事でした。)

※6/24/16:30補足 他のblog感想サイトさんをまわってみてハッとしたのだけれど、今回は真がよりにもよって機械である人造アイドルに負けたことによって「アイドルに心があるか(春香と真の対比)」問題が完全決着した話でもあったようです。たしかに、そのとおりなわけで、12話のバランスのよさに、あらためて感嘆。

あと、タイムラインを打っていってはじめて気づいたのだけれど、12話はほとんどずっと誰かが、しかも緊迫した早口でしゃべっています。沈黙の時間もほぼありません。
一話通しでほぼセリフで埋まっているのに、ガチャガチャした印象になっていないのは、本当に素晴らしいです。

こんなテンション作りをしながら、きちんと物語の内容がわかる。本当に、ムダがないということの大事さがしみるものがある。

今回、特に思ったのだけれど、『アイドルマスター』というのは、”男性不在に見えて男性がいる”物語だったようだ。タイムラインで千早(前カノ)、春香(今カノ)、インベル(彼)と表記したのはそのためだ。
つまり、基本的に男性客は、「インベルうらやましいな」と思っていると、春香と千早が自分を取り合っている気分になって気持ちよくなれる。春香の信頼も、千早の執着も、どちらもインベルに視点を置いていると、それぞれかわいらしく見えるように描かれているのだ。
たぶん、今の描き方の千早を見てウザく感じなかったら、それはうまくインベルを中心にした物語に乗れているということだと思う。
だから「すべてのアイドルには心がある」けれど、物語上、インベルのライバルはいない。ライバルがいるのは、あくまでもマスターのほうだ。つまり、インベルにライバルがいると、物語が現在つくっている中心のラインがたぶんブレるのだ。

これは、女性ばかりの世界をあつかった物語として、非常に秀逸な”男性の置きどころ”だと思う。なにせ巨大メカであきらかに人間ではないインベルは、お客さん的に決定的に嫌われることはそうそうないだろうから。

13話も、次回予告を見る限り、しっかり12話を引きずる様子だ。
本当に、素晴らしく安定している物語なので日記にあまりエントリは立てないと思うけれど、毎回たのしみに見ております。

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