魔法少女リリカルなのはStrikerS 10話 「機動六課のある休日(前編)」
ようやく、物語回しがうまい『リリカルなのは』が帰ってきた感触。
どこがうまいかというと、30分という尺に対する時間の使いかただ。前作のAsあたりは際だってこれがうまかった。
『リリカルなのは』の物語回しのテンポは昭和アニメーションに近いと、個人的に思っている。
基本的に物語あたりのエピソード数はすくない。そして、OVAならアイキャッチまでのAパート(10分程度)で終わらせる展開に30分かけて、物語の結論は容赦なく次回へ送ってしまうのである。
だが、その余裕のある物語回しのおかげで、キャラクタの日常描写に時間をかけたり、細やかな人物像が浮かんでくるシーンを作ったりすることができる。今回でいうと、エリオを心配するフェイトのようなシーンは、ふつうに物語作りをするときはまっさきにはずしてしまうところだ。こういうシーンは、物語を一切進めない。
それでも、『リリカルなのは』では、物語を遅くしてでも丁寧にそれを描く。その積み重ねが『なのは』の空気感をつくりあげてゆくからだ。
戦闘をウリにしているのに、雰囲気作りに過剰に時間を投資するのが、『リリカルなのは』の芸風だったのだ。
『Strikers』ではここまでこれが見られなかったから、『なのは』のシリーズとして見ると不満だったのかもしれない。
昔(80年代前半くらいまで)のアニメーションは、そんなに物語的な大きな山や急展開はないもののほうが多かった。
せいぜい、8話にひとつ程度で、一年49話として全体で6つ程度の山があるイメージだったように思う。
この比率をAsにあてはめると、「新デバイスへの代替わり」と「夜天の書復活」のふたつが大きいヤマで、他は基本的にそこまでの前フリと、それへの締めだ。
『Strikers』も今のところ、8話で一ヤマの物語だ。つまるところ、テンポ的には今くらいの物語まわしの速度で、きちんと物語進行は印象づけられる。それはむしろ古くからある堅実な方法だ。
「物語はきちんと進んでいるんだな」とお客さんに思わせるぶん、状況がきっちり進んでいればいいのだ。実は、描くものを適切に選択すれば、本編分量の25%(本編20分とすれば5分)も物語進行に回せば、きっちり物語が進んだ話に見えるのだ。
テンポは堅いのに今回の『Strikers』の序盤が不安定だったのは、数が少ないからまちがってはいけないエピソード選定に、あきらかに違和感があったからだ。
昔のアニメですら、序盤は気合いを入れて急展開を作っていた。だいたいの体勢ができてローテーションが回りはじめるまでは、けっこう気合いを入れてテンションをあげていたのだ。
『Strikers』は、序盤で勢いをつける展開をつくらず、「勢いをつけるキャラクタが誰になるか」も明確には指定しなかった。
これだけのキャラクタ人数がいながら、役割分担に明確なメリハリをつけることを拒絶した。これは、今風のキャラクタの動かし方になる。
テンポは昭和、キャラクタの動かし方は今風だ。
だから、『なのは』の感触はなつかしく、印象は新しい。これは、他の作品と『なのは』をわける、ひとつの明確な武器だ。これを徹底して手放さないのは、制作者がよくわかって動かしているということなのだと思う。
実際、10話の”ただの休日風景なのに世界が広がっているような加速感”を出すためには、シーンのキメ止まりをあげるため、9話以前に「新人のプライベートを描く展開を描いてはいけない」。市街地を11話で戦場にするなら、市街地風景も初出のほうがお客さんの印象は強くなる。だから、首都近くに機動六課の基地があるのに、首都の市街地もこれまで描かなかった。
「あれもこれもと面白そうなものを足していく」のは、足し算的なつくり。
「全体構成の中で、できる限りキーポイントで出す情報を初出にして、要所のキメ止まりをあげる」のは、引き算的なつくりだ。
へたくそだと、引き算ができない。物語の引き算は、実際、勇気がいるし非常に難しいのだ。
よくガマンして地味な展開を7話まで続けたなとは思う。でも、勢いをつけなければいけない序盤での引き算は、ちょっと難易度が高すぎる。
きっと展開は、制作者がはじめに26話分たてた計算通りに進んでいるのだろう。
でもやっぱり、物語にエンジンをかけるまで10話もかかる(そして第一アクトを低めのテンションで引っ張り続ける)のは、効率が悪かったなとは思う。
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