魔法少女リリカルなのはStrikerS 13話『命の理由』
そろそろ本当に、魔法少女モノなのか、軍隊モノなのかわからなくなってきた。
『なのはStrikers』は、すくなくとも『ガンダムseed』あたりより、確実に軍隊や軍事組織を描いている。下手をすると、そのへんの仮想戦記よりもしっかりしている。
そのくらい、今回の13話であかされた機動六課の位置づけは、見事な設定だと思う。
物語が機動六課のような特殊部隊を描くとき、背後の責任系までつくることはほぼない。つまり六課がポシャったときに誰が責任をとるのかがはっきりしているだけでも、『Strikers』は特異なのだ。
しかも、機動六課に危機感をいだくレジアス中将の立場にも、一定以上の妥当性がある。これは本当にすばらしいと思う。
物語では、たいてい、こういう独立精鋭部隊は、雲の上の人を最高責任者にすえるようなかたちでお茶をにごしてしまう。
もうひとつのパターンは、実体がよくわからない設定だけの人物を置くことだ。
ガンダムを例にすると、映画『逆襲のシャア』で、ロンド・ベル隊にかかわった”連邦政府高官のジョン・バウアー”がこれだ。ジョン・バウアーは、ロンド・ベル隊の設定を説明するために重要な位置を占める。けれど、ジョン・バウアーがどんな政治勢力と利害を背景にしているのかは、どうもよくわからないのだ。(ガンダムにそこまで詳しいわけではないので、間違っていたらすみません)
だが、現実問題から照らすと、”雲の上の人”パターンにリアリティは薄い。
現実社会では、組織はただえらい人と肩書きをキャラクタにつけるためにあるのではなく、きちんと仕事の範囲と責任範囲が決まっている。
だから、「本当に世界の存亡をかける(何百万人以上の単位の)損害が出てもケツをもてる雲の上の人」なんてものは、戦争時以外の平時には存在しない。
物語上のエース部隊が無茶をやってもOKなのは、雲の上の人が責任をとってくれるからではない。物語上そうなのだという合意がお客さんとの間にあるからだ。これが悪いわけではなく、合意の部分をどう納得させて、肝心なヒーローの活躍のジャマにならないようにするかが、雲の上パターンのみどころだ。
実体のわからない人(ジョン・バウアー)のパターンに関しては、ほぼダミーとして割り切って使われる。
ブライト艦長は、物語中、ただシャアたちネオ・ジオンと戦い続けた。地上で政治活動をしている人の立場をおもんばかりながらラー・カイラムを運営しているところは、画面上に描かれなかった。
物語は戦争状態でそれどころではないのだから、お客さん的にも納得できる。
『リリカルなのはStrikers』では、この責任者のあつかいが面白い。
”実体のわからない人”であり雲の上の人でもある、伝説の三提督は、表に現れない。
かわりに、機動六課がポシャったときに責任を問われるのは、ハラオウン家のクロノとリンディさんであり、はやての恩人である騎士カリムだ。
設立に力は貸してもらった。だが、身内の首が飛ぶから、組織の中で機動六課が傍若無人に振る舞うことはできない。
こういう設定への納得感をドラマに結びつけるセンスは、本当にすばらしいと思う。
ただ、ここまでしっかり社会のしがらみを描く必要があったのだろうかと考えると、かなり疑問だ。
お客さんが『リリカルなのは』に望んでいるのは、少女たちのハートフルな成長物語であって、派手な魔法バトルものだと思う。
すくなくとも、組織の論理と戦いながら、組織でしかできない事業をする青年将校のものがたりではないと思う。
機動六課と時空管理局の組織については、どうして早期にもっときちんとした説明を入れておかなかったのか不思議ではあった。
どうやら13話を見るかぎり、
- 機動六課がどういう性質の組織であるかという、真実。
- 時空管理局と周辺の政治地図上の、機動六課の位置づけ。
- 機動六課が直面している、政治的な難題(つまり社会的な妨害者)
を、13話にまとめて一気に説明してしまうつもりだったようだ。
しかも、それらすべてが、今回のレリック事件に関わっていることを示すように、物語的に必要なパーツがそろうのを待ってだ。
たしかに、最小のことばで状況をかたることができる、効率のよい整理だったと思う。
実際、この13話で、物語は、この先の展開に緊張感をぐっと増した。新展開を告げる好エピソードだったと思う。驚きをもって見させてもらった。冒頭のアギト、ラストのはやて、同じ古代ベルカ式魔術にかかわるふたりの、『いのちの理由』のカットも印象的だった。
それでもやっぱり、疑問に思う部分はある。
今回かたられた機動六課の話は本当に、前半7話くらいまでをぬるくしても、13話まで引っ張らないといけないことだったのだろうか?
『リリカルなのはStrikers』は、前作までと同じ家族と友だちの話なのか、それとも社会の話なのか。
いったいどこに着地するつもりなのか、狙ってか狙わずか、観客を迷わせる13話だったと思う。
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