魔法少女リリカルなのはStrikerS 15話「Sisters & Daughters」
嵐の前の静けさの回。
シナリオでよく使われる三幕構成の理屈どおりだと、続く16話~17話ないしそこからはじまる一連の展開が第2幕のクライマックスになる。
(三幕構成は簡単に言うと、全分量を3つに割って整理するという手法。このblogだと12話のエントリですこし触れてます。)
物語全量での統一感を考えると、ここからの展開はスバルに相当きついものになりそうだ。
もしも今回の襲撃でギンガをリタイアさせる(ないし裏切らせる)つもりなら、12話~15話までの前フリの打ち方は素晴らしいと思う。
クライマックスに入ってきたら改めてまとめるつもりだけれど、『Strikers』では、戦闘シーンのシチュエーションに前話までとかぶりがないように考えられている。
15話で、ギンガとスバルの模擬戦を戦闘シーンとして持ってきた。これは、物語的に盛り上がる位置として見事にワンチャンスをとらえたと思う。戦闘機人とスバルの母関連の話がなければドラマにからまなかったし、16話以降、訓練目的の(ドラマ的に色がついていない)模擬戦をやる余裕はもうなくなるはずだからだ。
このblogの感想では何度も書いていることだが、本当に『Strikers』は全26話の話の全体を見ながら一話一話を進めているのだと思う。
これも、全26話を全部見たあと、あらためてまとめることになりそうだ。実は、ここまでの戦闘シチュエーションの推移はある程度まとめたテキストを書いてみた(近いうちにアップします)のだけれど、列挙してみるととても面白い。
ただ、流れを考えてみて、15話時点まででも気づく部分はある。それは、普通の物語でなら、次の16話からはじまる展開のほうを、12話~13話のヤマ場に持ってきていたはずだということである。
この切れ目のヤマ場に「ヴィヴィオという新しい家族との出会い」「広がる人間関係の輪」という”あかるい話・しあわせな話”を持ってきたあたりが、なのは”らしさ”だと思うのだ。
なのはスタッフの物語における”らしさ”の打ち出しは、本当にセンスがいい。
ただ、「前線メンバーと”本気”のなのはの実力差」がまったく見えない問題は、まだ残っている。
キャラクタ間の実力差は、物語の流れを考えるとき問題にならないよという考え方もある。戦闘における実力序列は、週間少年ジャンプのバトルもの漫画がはっきり示しているように、あってもあまり意味のないものだからだ。
たしかに、男性のお客さんは「誰は誰より強い」的な序列づけが、私自身もふくえて非常にすきだ。けれど、物語はたいていその序列に不誠実だ。
物語がそれを求めるなら、強敵でもたいがいは「バカな、こんなことが!」で吹っ飛ばして問題ないのだ。実際、物語が実力序列に忠実すぎると、物語が気持ちよくなくなって観客もこまる。
それでも、『Strikers』の場合は、実力差問題がけっこう大きな位置を占めている。
言うまでもなく、『Strikers』は、主人公であるなのはが、後輩たちを指導する立場にいる物語だからだ。
主人公が底辺にいてのしあがってゆく物語では、実力差とは最終的につぶされるためにある。だが、立場がある人物を主人公にする場合はちがう。立場や実力とはまさに主人公が歩んできた結果であり、それを否定することは、この道のりを否定することだからだ。
さらに、ナンバーズ側にキャラクタがおそらく10人以上いることが、課題を非常にむずかしいものにしている。
なにがむずかしいというと、この数は、ナンバーズの中での実力序列がはげしいことを意味しているからだ。
これだけ数がいれば、普通に考えれば、ナンバース以外の敵がまだ後ろに多数ひかえているとは考えにくい。つまり、スバルたちもなのはたちも、両方がナンバースと戦うということだ。
「スバルたち前線メンバーが戦えるレベル」と、「本気の隊長格と打ち合えるレベル」と、ナンバーズの中で実力格差がある可能性が高いと思う。
そして、この”格差”こそ、『Strikers』の物語が明確なかたちでは絵にしてこなかったものなのだ。
(8話の”アレ”ですら、9話の話では手加減していたそうだ。なのはと前線メンバーには、どれほど実力差があるのだろう。)
この格差を、物語上でどうやって画面に出すつもりなのだろうかと考えると、これは楽しみでならない。
11話~12話で4人程度の顔見せしかできなかったものを、たぶん16話からの展開では、倍以上の人数を動かして物語にひとつのケリをつけることになる。
全26話中の16~17話(全量の2/3を消化)という話数では、たぶん解決丸投げがそろそろ厳しい。先に送ったら、後ろがつかえている以上しんどくなる一方なのである。
物語のかたちによっては丸投げも十分あり得るのだけれど、『リリカルなのは』らしくはない。『リリカルなのは』は、おさまりのいい物語を描いてきているからだ。
楽しみのポイントは、個人的にはもう一つある。
『なのはStrikers』の物語は、ヴィヴィオの登場となのはたちを母親にしたことで、物語の軸線を一本増やした。
けれど、決定的な物語の軸をいじるのは、たいていの物語にとっては致命的な結果をもたらす。最近だと、『グレンラガン』で、ニアにヒロインの軸線が移ったとたんにヨーコの影が薄くなったのがそうだ。『グレンラガン』が失敗したというより、元々からむずかしい挑戦なのである。近いところで顕著なものだと、『コードギアス』のスザクが騎士に叙勲されたあとの展開もそうだ。
軸線をいじれば、表面にすぐあらわれるかはともかく、物語は元のままではいられない。
職人技を発揮して整理するのか、それとも物語的(ドラマ的)な爆発を作って全部押し流してしまうのか。ある意味未曾有の状況になるのはたしかだと思う。
とりあえずひとりの観客としては、「どうなるのかまったく想像もつかない」。
ひょっとしたら残念エントリを書くことになるのかもしれない。
けれど、現状、16話からの展開を心から楽しみにしている。
本当に、ここまで期待がふくらんでいるのはアニメを見ていて久しぶりだ。
『なのはStrikers』が、これからはじまるシナリオ的なヤマ場でなにを見せてくれるのか、本当に楽しみにしている。
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