魔法少女リリカルなのはStrikerS 14話 「Mothers&children」
あいかわらずというか、組織まわりの描き方はかなりいい。
今回は、仕事中にヴィヴィオが気になって、彼女のデータを見ているなのはの描出がおもしろい。アニメはどうしても対象年齢層の低いあたりを意識する部分あるけれど、こういうサラリーマンぽい描写をアニメがやるのは、非常にめずらしい。
『なのはStrikers』が中心ターゲット層の一角にはたらいているおとなを強く意識している証左ではないかという気がする。
実際、『なのはStrikers』の物語が、機動六課という”せまい世界”の中で進んでいた理由が、ようやくあきらかになってきた。
つまるところ、家族の物語だからだ。
- 家族だから、お父さんとお母さんはちゃんと働いているよ
- でも、家の中と外で描く舞台をわけると、物語が二分されるし戦闘シーンをはさみにくくなるよ。
- そもそも、「なのは」で描いてる”家族”の物語って、基本的に「愛情にめぐまれない子ども(フェイト・はやて)が、”疑似家族”で救われる物語」だったじゃん。そもそも、『なのは』シリーズは、ちゃんとした家族がいるなのはが、むずかしい話を一切”本当の家族には相談しない”物語だったのだ。
- じゃあ、職場(機動六課)を疑似家族にしちゃえ。
- 疑似家族にしちゃえば「誰かが死んだら誰かが悲しむ」という納得感が出るから、戦闘の緊迫感もすごいことになるよ。
という感じだったのではないかと、最近感じているのだ。
だから、組織やそこではたらいている”人間の力学”、そして職場の”人間関係”を、かなりの手間をかけて描いているのだと考えると、しっくりくる。家族とは、せまい世界を中心とした”人間関係”だからである。
もっと働いている彼女たちの姿を、序盤から打ち出していけばよかったんじゃないかとは思う。
とはいえ、世間がせまいと、序盤がまさにそうだったように、まわりが味方だらけで物語がぬるくなってしまう。
さすがスタッフは、そのあたりをよく把握していたようだ。
12話~14話に入って機動六課を取り巻く状況をシビアにすることで、一気にバランスがとられた。
- レジアス中将をここに来て強力な敵として打ち出したこと(14話)
- スバルの母親をからめることによって「任務中に死人が出る可能性」をほのめかしたこと(14話)
- 機動六課が実は孤立無援であることをはっきりさせたこと(13話・14話)
- スカリエッティの正体について、いまだに手がかりもろくに出していない(身近にスカリエッティがひそんでいる可能性を提示している)こと(14話)
- 主要な敵を、まだ退場させていないこと。つまり、散発的な攻撃をさせると勝負になり、勝敗がついてしまう。だから、戦闘シーン自体を絞って勝負自体を起こさせないようにしている(緊迫感を保留している)こと(12話)
この「組織ひとつを疑似家族にしてしまう」という構造は、ドラマ的にも大きく寄与しはじめた。
機動六課というちいさな世界を、過度に家族的に描いていることによって、「家族のすぐそばに敵が忍び込んでいる」という状態を作っているからだ。
『なのはStrikers』は、全26話中の1/3以上にあたる9話まで、ひたすら機動六課というせまい世界ばかりを描いてきた。
ここで”機動六課という疑似家族”がどこまでなのかという線が明確になった。つまり裏を返すと、”その枠の中にはいらない外側”も明確になった。
だから、これから後半の物語のキーキャラクターになるヴィヴィオは、「本格登場した13話から14話までという超ハイペースでも、機動六課の”内側”の枠に明確に入れておく」必要があった。
今回の14話の物語主線は、なのはとフェイトの朝の目覚めからはじまって、疑似家族である機動六課の面々の進歩と状況の進行をじっくりと追いかけながら、ヴィヴィオが”家族”になって締まる話。情報自体はたくさん入っているけれど、物語主線にぶれはないから、多少煩雑でもきちんと読み取れる。
次の話へ向かって投げているヒキも、やはり”家族”の話であるナカジマ家の母親の死についてのエピソード。
なのはスタッフの、あまりしつこくせずにテーマを統一するセンスは、本当にすばらしいと思う。
『なのはStrikers』の物語は、どこを切っても機動六課の身内ばかりである。
逆に、六課の身内でないものは、六課メンバーに致命的な被害をおよぼす現状の敵である。
そして前述したように、①敵の手の内も実力もわからず、②敵がどこにひそんでいるかもわからず、③戦いは人死にが出る可能性のあるものである。
つまり、我々がふだん目にする物語の常識になおすと、常に家族の誰かに死亡フラグが立っているという状態になる。
この万年死亡フラグ状態が、現在の『なのはStrikers』にとっては、トップスピードではなく巡航速度なのだ。
「家族」や「友だち」というせまい世界にドラマの中心が常にあった『リリカルなのは』シリーズらしい、本当に”らしい”選択だと思う。
11話以降の展開を見ていると、本当に『なのはStrikers』は、26話の全体構成をきっちり考えて作っているのだなと思う。
冷静に考えて、「初回あたりから出ていたスバルの母親の死亡エピソードが、14話にようやくあきらかになりはじめる」ペース配分は、そうでないとおかしい。
そもそも7話までの序盤は、ほかに描くことがあったどころか、全然ドラマチックなことが起こらなくてスカスカだったのである。
シーンや展開のキメ止まりをあげて「同じ展開をシリーズ上で一度しか作らない」よう、26話全量での物語整理が行われている。
ほかにも、1話あたりの情報密度をあげたり、社会のややこしい話を盛り込んだり、1話あたりでまったく話が完結しなかったりと、リリカルなのはという枠がゆるす範囲でいろんなことを試している。
割り切って、低年齢層のお客さんが嫌いそうなことを片っ端からやっている印象だ。
3作目を作るにあたって、対象とするお客さん層を広げるのではなく、すでにいるお客さんのほうを重視したのだなとつくづく思う。
同じことを三度やると、お客さんは飽きるものだ。けれど、新規のお客さんへ向けてアピールするなら『リリカルなのは』シリーズの一番強いかたちである従来のかたちのほうがいい。
ふたつのうちどちらを取るかを考えて、『Strikers』のスタッフは飽きられないほうを選んだのだと思うのである。
”友だち”から”家族”へ。
そのシフトが意味しているのは、そういう早め早めに手を打った挑戦だったのではないかと思うのだ。
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